Today's Insight

2024/4/30 10:00作成

日銀:金融政策決定会合レビュー

■ 日銀は政策据え置きを決定、円安は物価への波及を見極める姿勢
■ ドル円は急騰・急落を演じ、市場では介入警戒感がこれまで以上に強まる

 日銀は25、26日に開催した金融政策決定会合で、3月に決定した政策修正の影響を見極めるため、金融政策の現状維持を決定した。政策金利(無担保コール翌日物金利)の誘導目標を0-0.1%程度に据え置き、長期国債の買い入れについても「3月会合で決定された方針に沿って実施する」と明記し、現状維持とした。会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価の基調に近いとされる生鮮食品・エネルギーを除くコアコアCPIは、2024年度と2025年度は1.9%で据え置き、新たに2026年度は2.1%と目標の2%を超えると示された。賃上げや人件費を価格転嫁するといった動きが広がり、政府・日銀が掲げる物価2%目標前後の水準が当面続くと見通された。今後の金融政策運営は、経済・物価・金融情勢次第であり、経済・物価見通しが実現する場合は金融緩和度合いを調整していく方針が追記されたが、当面は緩和的な金融環境が継続する見通しは維持された。

 同日開催された記者会見で、植田日銀総裁は円安・資源価格上昇により、輸入物価上昇の価格転嫁による物価上昇圧力(第1の力)が高まるリスクを見極める姿勢を示した。また、第1の力が次の春闘での賃上げにつながるようであれば、賃金と物価の好循環による物価上昇圧力(第2の力)に波及するとの認識を示した。円安について注視しているものの、通常は物価への影響は一時的との認識を示し、基調的な物価上昇率に無視できない影響が生じれば金融政策対応の判断材料になるとの見解を改めて示した。円安に対応するために政策修正を行うとの市場の一部で浮上していた思惑は払拭される格好となった。

 これらを受けて、ドル円は先週末26日に158円台後半、昨日には一時160円台前半まで上昇したが、154円台後半まで急落するなど荒い値動きとなっている。神田財務官は為替介入の有無について言うことはないとするなか、市場では介入警戒感がこれまで以上に強まるとみられる。日米金利差が保たれるとの見方からドル円は底堅く推移するものの、上昇の勢いは削がれ、再び160円台に到達するには時間を要すると思われる。


投資調査部長
山口 真弘

プレスティア インサイトについて

マーケット情報